
菊月太朗さんについて
同人漫画作家。千葉県在住。2013年から同人活動をはじめ、現在、漫画8作、小説2作を発表。日本の旧(ふる)い小説、旧い漢字、旧い建築物を愛している。明治時代メイドものの「春衡伯爵家の事情」が評判を呼び、すでに重版数回。
同人漫画 8冊をきょうゆう出版で印刷
菊月さんはきょうゆう出版をどのようにご利用でしょうか。
私の漫画はいつもきょうゆうさんで印刷しています。最初にお願いしたのが2013年のデビュー作「冴ちゃんと僕」で、最近では「春衡伯爵家の事情」の第壱巻、弐巻の印刷を依頼しました。
最新作となる「春衡伯爵家の事情(以下 『春衡~』)の印刷の内容は次のとおりです(1巻、2巻共通)。
項目 | 内容 | 備考 |
判型・ページ数 | B5判・32頁 | - |
紙 | 表紙:アートポスト 本文:上質紙 |
表紙にはマットPPという触ったときにしっとり感が伝わるような加工をしています。 |
定価・発行日 | 500円、2016年5月 | - |
「春衡伯爵家の事情」について
時は明治二十年。
旧大名家の家系である春衡伯爵家に仕える、国許の下級武士の娘――静。
彼女は行儀見習いの為に春衡伯爵家の次男――芳朝付きのメイドと成る。
身分違いの想いを寄せながら、二年。
芳朝が大学を卒業した或る日、到頭――縁談の話が持ち上がる。

最初は手軽さを気にしていた
菊月さんが初めて「印刷」を経験したのはいつですか?
創作は小さい頃から好きで、本の状態の作品を作ったのは中学校の頃でした。自分の絵や文章をコピーしてホッチキスで止めて作る、所謂コピー本を作っていました。
高校の頃は文芸部に所属し、この時の部誌の印刷が私の印刷デビューになります。
5年前から同人活動を始めました。同人仲間が印刷に詳しかったので、最初は教えて貰った通りに作りました。オフセットとオンデマンドの違いもわかっていなかったので、少部数を高いオフセット印刷で刷っており、完売しても大赤字でした。
ですが、それから何冊か本を作っていくうちに、次第に「印刷の質」に注目するようになりました。
次第に印刷の「質」に目覚めてきた。
どんな「質」に目覚めてきたのでしょうか。
最初にこだわりたくなったのは、小説を印刷するときの黒インクの色でした。上等な黒インクで刷ると、インクが黒々としていて、文字も挿絵もきりりと引き立つのです。逆に安いだけの印刷会社に頼むと、不自然にテカった安っぽい見た目になります。インクと紙との相性も大事です。 2013年に、初めての漫画作品「冴ちゃんと僕」の印刷をするときは、上手なところに頼みたかったので、印刷会社は最初から探し直しました。
最初は軽いノリで選んだきょうゆう出版
そのときはどうやって印刷会社を探したのですか。
同人仲間に「成人向けの印刷が出来る、どこか良い印刷所さんをご存じでしょうか?」と聞いてまわりました。
するとある人から「きょうゆう出版は、成人向け印刷も嫌がらずに印刷してくれて、値段もそこそこだし、〆切の融通が効くし、無茶なこといっても割と大丈夫だよ~」と教えられたので、それでは、こちらの印刷所さんにしようと決めました。
正直なところ、最初はそれほど深く考えずに、きょうゆうさんに決めました。でもその後、実際に仕事を頼むようになってから、きょうゆうさんの良さが色々と分かってきました。

きょうゆう出版の良かった点
どんな点を良いと感じていただけたのでしょうか。
まず「要所要所できちんと連絡をくださること」が好印象でした。
これは当たり前のことに思えますが、安い印刷会社さんを使うと、入稿してから納品まで全く音沙汰がなく、ある日とつぜん本がバサッと送られてくるということもあります。
値段的に仕方がない事だとは思いますが、やっぱり安い印刷会社さんにはそのような事が多い印象です。翻って、きょうゆうさんは要所要所で丁寧に連絡をくださるので安心感がありました。
そして印刷の色指定などで「こちらのミスを親切に教えてくださる」のもとても助かりました。
たとえば『春衡~』の裏表紙のクロは、真っ黒ではなく、やや茶色がかった黒なのですが、今回、入稿するときデータ保存の設定を間違えて、本来の意図と違う色味のデータで入稿してしまいました。これに対して、きょうゆうさんから「もしやこの黒のCMYK比率、お間違えではないですか?」と御指摘がありました。

そうした「よくある間違い」については、きょうゆうさんの社内にチェクリストがあり、社員の皆さまが、それを使って毎回チェックしているそうです。安いだけの印刷会社だと、入稿されたデータをただ印刷して終わりです。しかし、このときの経験で、きょうゆうさんには「ちゃんとした本に仕上げるんだ」という意識があることが分かりました。
もう一つ、私にとってとても助かることは、きょうゆうさんは「本の背幅を事前にミリ単位で正確に教えてくださる」ということです。
背幅が事前に分かることの重要性
「背幅を正確に教えてくれるのが助かる」とは具体的には。
例えば、『春衡~』の第二巻は、本の背だけ赤紫になるよう印刷しています。でもそれには「本の背幅が何ミリになるか」が事前に分かる必要があります。それが不明のまま版下データを作ってしまうと、最悪の場合、赤紫の幅が広すぎて表紙にはみ出たり、あるいは幅が足りずに背が3色になったり、見栄えの悪いことになります。
その点、きょうゆうさんは事前に紙厚やページ数から背幅を逆算して正しく教えくださるのでとても助かっています。
『春衡~』は薄めの本なので、今の所、背には何も書いていないのですが、この先、総集編などでもっと厚い本を出すことになった暁には、作品名や作者名を背に印刷したいと思っています。その時の為にも背厚が分かることは重要です。
グッズの制作も依頼
この他、アクリルスタンドやキーホルダーの制作もきょうゆう出版にご注文いただきました。
アクリルスタンドとキーホルダーは前から作ってみたいと思っておりました。きょうゆうさんのホームページに、本の印刷だけでなくグッズの制作ができると書いていらっしゃったのでお願いしました。完成品を見てみると、やはり可愛くて、愛着が湧きますね。

安さ優先の印刷会社の注意点
現在、マンガ同人誌の印刷会社を探しているみなさんに向けて「先輩ユーザーとしてのアドバイス」などあればお聞かせください。
同人誌の場合、私もそうでしたが、最初はどうしても手軽さや安さを優先して選びがちだと思います。
もちろん安いに越したことはありませんが、そういう所は、これまでお話ししたことのほかに「納品してくるときの梱包が甘い」ということも、時折あります。
ひどい場合だと輸送の途中に本の角がこすれて折れて、本が傷んでいたりすることもあります。これでは売り物に出来ません。
この「梱包の丁寧さ」はホームページの説明や電話での説明だけでは分かりません。しかし、同人誌を「販売する」という立場の人にとっては、とても重要なポイントになることはお知らせしたいです。ちなみに、きょうゆうさんは梱包はいつも丁寧です。いつもありがとうございます(笑)。
今後の期待
きょうゆうへの今後の期待をお聞かせください。
次は小説本の印刷を依頼することになっています。そのときはぜひパール調の光沢紙、例えばキュリアスメタルのような「キラキラした紙」を使いたいですね。
もともと本作りは好きなので、「帯をつけてみたい」「表紙に特殊な紙を使ってみたい」「箱に入れたい」「上製本をしたい」など希望は色々あります。それは作者の自己満足にすぎないかもしれませんが、同人誌なので心ゆくまで追及したいです。
もちろん予算に限りはあるのですが、それでも試してみたいことですので、まずはきょうゆうさんに相談させていただければと思っています。これからもよろしくお願い致します。
